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Dr.Hashimoto
Dr.Matsunaga
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BeMam
MESSAGEでは、過去数回に渡り母性についての特集を組みました。結果として、どんなときに何を通して女性が母性を感じてゆくのかが分かってきました。『だいじょうぶだよ。結婚、妊娠、出産、おっぱい授乳を通して女性がみな幸せに輝いていってるよ』と、ホッとする一方で、幼児虐待や子どもを巻き込んだ事件の増加が心配として残ってしまいました。さあ、どうしよう。
答えを考えたとき、まずは「女性がより自然に母性本能に目覚め、出産〜育児がうまく行く」ための環境を考えてみるのですが、そうすると最も育児への意味があるとされる母乳育児(哺乳動物としての哺乳行為)が妨げられている現状に気付きます。施設分娩が主流で社会での男女の役割分担・労働の格差が縮まる中、女性自身が作り出した現状なのでしょうか?
中には初乳以前からミルクを与える(本誌調査11%)施設の存在もあり、医学や科学、ビジネスが生命そのもののメカニズムを操り始めている現実(遺伝子操作なども含め)もあります。賛否を問うのに難しい判断を要しますが、当たり前のことが当たり前でなくなってきている現状の是非を探る必要がでてきました。
そこで、最近おのずと多く取り上げているのが母性を啓発しながらの自然分娩や母乳育児を推進する人たちのことでした。もちろん組織や会に関係なく、同じ発想で従事されていらっしゃる関係者も多いことでしょうが、一つの目安として、ここには素晴らしい情報があるものと取り上げているわけです。
そして『ちょっぴりモラル啓発』を唱う編集部としてもやることの課題が決まってきます。
より良い環境に結びつくような企画をたて、社会や読者にしっかり情報が伝えられるよう頑張ることです。まずはそのトップ対談をどうぞ!
司会は、福岡県の愛和病院総婦長・上田たかこさんにお願いしました。舞台は熊本、ニュースカイホテル、インペリアルスイートルーム。
編集部の準備が進む中、おやおや、さっそく元気な声が集まってきましたよ。ザワザワザワ‥(個人的な名刺交換)。そして、いよいよ本番。有名な先生をトップに現場のあたたかい話がはじまりました。
上田■みなさん、こんにちは。なんと熊本は今朝、みぞれと雪でしたね。それに39度の熱を出した産婦人科診療所マ・メールの池田信子先生も無事出席。BeMam
谷高さんの計らいで、みなさんこうして集れたことを、大変良き出会いと思います。
それでは両先生を中心に、みなさんにメッセージをお願いしましょう。橋本先生からお願いします。
橋本■日本母乳の会の橋本武夫です。実は松永先生とは10数年前にソフロロジーって何だろうと、先生の病院を訪ねていろいろお話を聞かせてもらったことがあるんです。その時、偶然に『フランスのリヨン大学で赤ちゃんのマッサージをしている』との話を聞き、さっそくビデオをお借りして、私の病院でもマッサージを始めたという経緯がありました。いまでは日本でも赤ちゃんのマッサージがポピュラーになりつつありますが、ソフロロジーとともに日本にマッサージを取り入れたことに感激し、感動的な出会いがあったんですね。今でもいろいろ勉強させていただいています。今日は久しぶりにお会いできて大変嬉しく思っております。
上田■お産の後を担当する小児科の橋本先生から、松永先生との感動的な出会いの話がありましたが、お産というステージに立って、今度は松永先生にソフロロジーのお話を交えて紹介をお願いします。
松永■私自身がソフロロジーと出会ってちょうど14年になります。当時を振り返ってみますと、私どもの病院が20周年の折、記念行事の一つとして海外研修がありました。その時にアメリカに行き、産前教育に感心して戻り、私の病院からもお母さま方になにか発信できる場所が必要だと考えて他目的ホールを造りました。
日本にはまだ母親学級すらなかった時代のことです。
このホールを発信地として、お母さまに伝えるものを模索する中、フランスのソフロロジーに出会いました。当院でもラマーズをしていたころですが、パリに行ってみるとみなさんソフロロジーをやっているんです。これだと思い導入を考えたのですが、文献が何もないんです。
そもそも、日本に文献が入るのはアメリカを経由することが多いのですが、ソフロロジーの文献はなかったんですね。
結局、アメリカを飛び越えて日本に直接入れようと、翻訳・本づくりをはじめました。
あのころから私たちがいろいろ苦労して作り上げてきたソフロロジーは、いまではフランスのソフロロジー以上によいお産ができるとの評価も得ています。
上田■実際にはどのような点で評価が高いんでしょうか?
松永■はい、その大きな要因はイメージトレーニングです。これによりお母さま方に自主的なお産を自分から作り出していくという気持ちを持っていただくことができ、次にこれを容易にするために音楽テープを作り音楽療法をドッキングさせたんです。それが今のソフロロジー式分娩のためのイメージトレーニングの曲で、フランスにも輸出されて基調となっています。
また、カリキュラム面でもフランスでは1回3時間のプログラムを8回の講座で用意しているのに対し、日本ではより多くの人に知っていただきたく、3時間1回の産前教育でお産ができるように組んでいます。それが今のソフロロジー法研究会のカリキュラムです。
特別な教養を必要とするものではありませんし、みなさんに理解していただいて、感動の声を多くいただいております。
上田■具体的な素晴らしさはどこにあるのでしょう?
松永■ソフロロジーの基調となっているのは心なんですね。今までの産科学というのはエビデンスをベースとしたメディシングでしたから、どうしても心の問題が欠けていたんですね。この近代産科学に心の問題を問いかけたのがソフロロジーだと私は思っています。
そのため、お産の形ではなく、あくまでも心の問題を取りあげた産前教育として、お産が分娩台を離れようが、水中分娩だって、助産婦さんがやっているお産だって全く同じ考えでできるのがソフロロジーなんです。お母さんにいい出産をして欲しいという願いそのものです。
おかげさまで、産科関係者の間ではソフロロジー分娩が自然分娩として理解を得られるようになり、日本に定着してきたと思っています。
橋本先生のことは、以前から母乳育児ということで、赤ちゃんに非常にフレンドリーなエモーショナルサポートを続けられている先生として、よく存じ上げており、3回目のソフロロジー学会でも先生に講演していただき、すばらしいとの大好評を得、みなさんからやんややんやの喝采を受けています。
今回、久しぶりにお会いできるということで、楽しみにしていました。
上田■松永先生によって新しくなったソフロロジーが今ではより深みを増し、まさに日本発世界の哲学のお産という感じがしてまいりました。
そして出産された後、赤ちゃんが再びお母さんと一体になるところに母乳がありますが、次に橋本先生の関係するエビデンスのお話をお願いします。
橋本■松永先生のお話にエビデンスという言葉が出てまいりましたが、訳すと情報という言葉になります。これは字のごとく情けという字が入っていますね、情けの報です。しかし今のエビデンスはほとんどが数を報じる数報という進め方がされています。
『データがこうだからこうだとか、データがないからこれはだめだ』と、でも本当のエビデンスはそうじゃなくて情報ですから、心すなわち意気や志気も含まれたものであると思います。その点、今の医学会が使っているのは数報のみで少し片手落ちだと思います。
そうしていくと、ソフロロジーと母乳育児というのは全く合体したものだと思うんです。先生がおっしゃってくださいました第3回のソフロロジー研究会(大阪)でお話させていただきましたが、そのときに与えられたテーマが母性の成熟と母乳育児でした。
ソフロロジーというのは松永先生のお話にもありましたが、母性の成熟の一貫としてのお産なんですね。そこまで考えておられるんです。
この母性の成熟のお話をする時に、実はソフロロジーと母乳育児にものすごく共通点を見い出すのです。
読者には難しい言葉になるかもしれませんが、お産や哺乳動物としての授乳を考えた時、ヒューマンバイオロジー(人間生物学)という言葉がでてきます。
ソフロロジー分娩はまさに人間生物学、ヒューマンバイオロジーの上にあるんですね。先生の心がヒューマンバイオロジーの上に立っている。おっぱいもまさにそうなんです。これはもう理由付けも何もいらない。人間っていうのは哺乳動物なんだから哺乳動物の通性としてまずおっぱいを飲ませるのが当然のことで、人間として当然の行為ですね。
まさにソフロロジーも母乳育児もヒューマンバイオロジーのなかに続いているものとして両立しているのです。
上田■橋本先生から両立との話が出ましたが、実際に賛同された医療現場ではすでにソフロロジーも母乳育児も取り入れていますね。
ここで、その一つの施設。大分の熊谷先生のお話をお伺いします。
熊谷■くまがい産婦人科事務長の熊谷です。診療で現場を離れられない院長(主人)の代役ですが、よろしく、どうぞ。
くまがい産婦人科では、開院当初からスタッフ一同ソフロロジーに取組んできました。また、母乳についても自然な流れの一環として当然母乳育児しかないと思っておりましたので、開業当初より母乳に取組んできました。ベビーフレンドリーホスピタル/BFH(赤ちゃんにやさしい病院)の認定も1998年に受けております。
十数年前の開業当初は、ソフロロジーも母乳育児も大分という地域の中ではなかなか受け入れられず、批判もかなりありましたが、その一つ一つを解決していくために丁寧に対応し、誤解をなくしていこうと努力を続けてきたことにより、10年たった今ではかなりご理解いただけるようになりました。ソフロロジーで学ぶ、あるがままを受け入れる心をお母さん方に充分理解し、気づいていただければ、赤ちゃんの気持ちになって陣痛の痛みも赤ちゃんと一緒に受けとめ、乗り越えていこうと頑張ることができ、お産がスムーズに進んでいきます。また、スタッフ自身の心の中にも、ケアをさせて頂くお母さん方のあるがままのその姿をそのまま受け入れる心、すなわちソフロロジーの心がしっかりと宿ることにより、当院の目指す「赤ちゃんにやさしい病院、そしてお母さんにやさしい病院」となることができるのだと思います。
お母さんたちから「スタッフの方がみんな優しく、いろいろとできないことを言葉で指摘され注意されるのではなく、ほんのささいなことでもできることを認めて、ほめて励ましてくれるスタッフの姿勢が好きだ」と言ってくださいます。また「人は優しくされれば安心する。安心すれば必ずお産もうまくいくし、お乳もでてくるような気がする」と言ってくださっております。
これらの言葉を肝に銘じて、これからもスタッフ一同、心をこめてお世話をさせていただきたいと思います。
上田■本日は主任の武石さんにもお越しいただいていますが、現場はいかがですか?。
武石■くまがい産婦人科の助産婦主任、武石みち代です。
私からは実際にソフロロジーと取り組みはじめて変わったことを簡単に紹介させていただきます。
平成4年から11年までの8年間で帝王切開率は大きく減少し4.1%、緊急帝王切開についても3分1の1.3%と減少しています。逆に人工的な手のはいらない分娩も85・2%から89・0%と増えているんですね。分娩に要する時間でもいい結果がでておりまして、これらのことは現場でも励みとなっています。
先ほど、橋本先生から心がヒューマンバイオロジーの上に立っているとの話があり、とても感動して拝聴しておりましたが、現場は、まさにお母さまと心のふれあいの場になりますから、その大切さがお産の環境をよくするものと、院長の志もありスタッフ一同頑張っております。
上田■お産の環境を考える若いパワーにも伝承されていくんですね。
さて、BFHの話がありましたが、申請中の松尾先生、いかがですか?
松尾■熊本市立産院の松尾勇です。
産科医として、常々自分ではやさしい分娩をしていると思っていたのですが、平成4年に松永先生のところの看護婦さんからソフロロジーを紹介され、さっそく出かけてびっくりした当時を思い出していたところです。ちょうどその日に『まあ帝王切開かな?』と思われる気管支喘息を合併した44歳の初産婦さんがいて、早速今イメージで頭に焼きつけたばかりのソフロロジーを先生のビデオのように実行してみると、意外と安産で産まれてしまって、その時にご家族、スタッフもみなさん感動して、これは凄いと思いましたが、以来、松永先生の教えにこっています。
ソフロロジーの一番よい点としては、妊娠した瞬間から『赤ちゃんがかわいい、この赤ちゃんを大切にしよう、この赤ちゃんのためならどんな苦労もいとわない』というお母さんの気持ちがずっとその後のことにも影響してくるということで、今の時代の中、『母と子の絆を強くさせてあげたい』という僕の一番の思いが生かされる点にあります。
母乳育児では、母乳、母乳とあまり力をいれ過ぎると一部妊婦さんの反発がありますが、その時は橋本先生の3回目のソフロロジーの学会で話された、テーク・イット・イージー、気楽にやりなさいと伝えます。
最初からお母さんにあまり気を張り詰めさせるのではなく、4〜5日目から出るようになりますよと気楽にやりなさいというようにさせていただきましたところ、母乳率もだいぶ良くなってきています。
BFH認定への申請は、去年の10月に、認定を受けるための申請をしたばかりです。
確かに申請するまでも母乳には自信があったんですが、いざBFHの認定をとろうと申請してみると、それまで何かある度に糖水を加えていたことも少なくなり、昨年末から今年1月中までにも1例しかなく、母乳の方も非常にうまくいっています。
上田■松尾先生からソフロロジーとの出会いでお母さんの満足した感動的な出産の話やBFHの認定申請でさらに母乳率も意識も高まったという話がありましたが、女性にとって出産までの経過や育児そのものがうまく行かないケースがありますね。
それでは次に、広く女性のケアをされているマ・メールの池田信子先生にお話を伺いましょう。
池田■産婦人科診療所マ・メールの池田でございます。マ・メールとはフランス語で「私のお母さん」という意味です。父が産婦人科医、母が助産婦で小さな診療所なんですが自然主体の分娩をしており、母の刺しゅうを壁にかけ、母が作った料理を出してやっていましたが、5年前に分娩を休止して、現在では赤ちゃんからお年寄りまで女性の健康に関わるトータルケアの仕事をさせていただいています。
小学校、中学校、高校そして大学に講議や講演にいかせてもらうことが多くなりました。その中で将来的な妊娠・出産・子育てというものの前持ったアドバイスができれば、と日々考えています。最近は若い女性に接する中で、例えば女子大生に「妊娠・出産・子育てについてどう思いますか」というレポートを書いてもらうと「痛いから産みたくない、子育てが好きじゃないから、子どもがあんまり好きじゃないから産みたくない」という内容が年々増えているのに驚くんですが、女性の本来持つ素晴らしさを知って欲しいと願っています。
ある保育学という講議の中でソフロロジーや母乳保育のビデオなどを見せ、視聴覚的にも触れてもらうと、「先生、産んでみたい」という感想がぐっと増えてきました。
これは社会の中で単に漠然とした不安を抱いてそう思ったのかもしれない、ならばもっと素敵に伝えていけたらと意欲がでてきます。
またマタニティクラスに講議にいきますと、不安を抱えていらっしゃるお母さんがとても多いので、一つ一つ不安を取るようなお話をしていくとホッとされますが、これも大事だと思います。
あるいは中学校、高校で性教育を行なって最後に「母乳をすすめるための10カ条」のポスターをバーンと貼るんですが、生徒さんから「わぁ〜、かわいい」という声が上がります。この素直に喜んでくれる感性をもっと社会全体で引き出してあげられたらと思います。そして私にも何かできることがあるんじゃないかと。
また色々な問題を抱えている思春期の方達と接して感じるのは親子関係の大切さです。豊かな性教育が中学生、小学生から出来ないか、いや3歳、いやいや妊娠出産のあり方やおっぱい哺育から考えたいと。本当にお母さんが自信をもって産みあげ、愛おしくて可愛くてしょうがないような子育てができれば、それがまた子どもに伝わって良い家族関係ができていくものと、同性の立場から私たちが語っていきたいなぁーと思います。
上田■女性のライフサイクルを通して、母性が育っていくことがいかにその後の生きざまに大切かということまでがでてきました。
松尾先生からはBFHを目指して、病院スタッフの意識がたかまりドクターと助産婦、看護婦が一丸となっていい感じになってきたという話がありました。まずは一人の熱意が病院の意識を変え、心を動かし、やがては病院全体の意識が高まり、分娩を通してその後の育児がうまくできるサポートまで考えていくということで、ここにまさに両先生のおっしゃる人間生物学、ヒューマンバイオロジーの当たり前の姿や社会の目的が見えてくる様です。
トップの先生方、最後にいかがでしょう?
松永■いまおっしゃった通りで、生物が何のために生きているかということになりますと、人生の目的をみなさんいろいろ言うわけですが、生物学的には自分のDNAを子孫に伝えるということに尽きます。
生物は自分の子孫を残すことが大命題なんですね。
その根底に流れているものが母性で、母性はもともと遺伝子の中に組み込まれてきているわけですが、今の社会の中で、それを表面に表せないまま出産を迎え、育児につなげてしまう女性がでてきているのが現代だと思います。
そこで一番必要なこととして、これからの育児がしっかりできる母性というものを、まず妊娠中から引き出してあげること、それが産科に携わる私たちドクターや助産婦、看護婦の使命ではないかと思います。
そして、私たち生命の細胞が作られているのは全て母親の体内であり、その環境というのは、お母さんの生活、食品、食べ物、思考、考え方、そういうことがすべて赤ちゃんの環境になってきているんですね。
ですから、母性というものを健やかに育てて解き放してあげる。出産に向け、育児に向け、これを育てていこうというのが私たちの産前教育です。今までの産科学は無事うまれればいいということでしたが、人間の生命の継承というのは単に安全に産むということだけではなく、健やかに出産育児につなげていけるよう妊娠10ヶ月間をお預かりしているのが私たちの基本の考え方となっているわけですね。
上田■有り難うございました。それでは橋本先生。
橋本■男性が母性の話題を出す時に、女性の中には一種のアレルギーをもよおす人がいることと思います。母性を名目に女性へ育児を押し付けていると理解するのでしょう。
そういう意味では池田先生の様に同性が若い人たちにアピールしていくのは大変良いことだと思います。
現実にいま、保育士さんになる学生のところに講議に行っても、その学生の3分の2が赤ちゃんを抱いたことがないと言います。新生児センターに見学にくる女子大生に聞いても半分いません。
子どもを抱いたりあやしたり、遊んだことがない女性が子どもを産んでいる時代なんですね。これはもう由々しき問題だと思います。
母性には本能的なものと行動的なものがあり、社会や家庭において若い女性が母性行動を体験していないことは大きな問題だと思います。
母性の成熟というのは松永先生がおっしゃるように、もうお腹の中から始まっていて、お産を通して、また産後の母子の一体となった母子相互作用の中で出てくるものでしょうし、成長して大きくなっても社会の中で母性行動を獲得していかなければならないのですが、これが途切れ途切れになってしまうと行動的なものがおろそかになってしまい、トラブルを生じる結果にもなってしまいます。
おっぱい(母乳哺育)は本能的なものですから、誰でも自分の子を産んだらあげられますが、これも日本の現実では5割ないということです。
これもヒューマンバイオロジーからみたら由々しき問題です。
そこで、これをいま日本で少し広めていこうというのが、ソフロロジーも同じだと思うのですが、私たちの立場でもあり、その広まり方においてソフロロジーと母乳の会に共通の流れがあります。
例えば母乳というのは産科の医者でも小児科の医者でもみんなが良いということを100%分かっているのに現実的には半分以下です。
お母さん達にアンケートをしても9割以上がおっぱいで育てたいと言っていますが、現実的には半分以下にまで下がっているんですね。
9割以上のお母さんが希望しているのに半分に行かないこの原因を考えたとき、産科施設の在り方が大きな課題となります。
おっぱいの広がり方は、お母さま方が良く知っていて、実際に赤ちゃんを産んでおっぱいをあげてみるとその大切さがよく分かりますから、おっぱいのサークルが全国にでき、いっしょに考えあっているケースが増えてきています。
ソフロロジーというのは産婦人科の先生達が新しい方法として考え、医療者には知られていますが、毎年新しく誕生するお母さまにはまだまだ知られていません。
最近、母乳の会でシンポジウムを開いてもお母さんがどんどん増えてきているのに対して医者がなかなか集まりません。もちろん母乳が浸透すれば母乳の会は解散するぐらいの気持ちで私もやっているのですが、一番良く知っている産科医や小児科医が上手くすすめられないでいる現状は、母乳をすすめていく上での大きな課題となっています。
上田■ものすごく現実的な課題が出てきましたので、一つ先生にお聞きします。
ミルクはいけないの?と心配されるお母さんがいらっしゃるかと思いますが?
橋本■おっしゃる通りです。しかし答えは『いけないの?』という以前に重要な問題があるんです。
すなわち母乳育児はヒューマンバイオロジーの原点に立つということでいいのですが、今の子ども達の環境や成熟度、そして社会問題、それらを考えた場合に、母乳哺乳は母子間の大切な役割、育児のひとつであるという理解の上に立って考えなければなりません。
まずは、『出ないからミルクではいけないの?』に対しては普通でも9割の人が問題なくお乳が出ます。出産直後は出なくても数日後、必ず出るようになりますからあきらめないでください。
しかし、本当に出ない、あるいはやれない場合などはミルクも必要ですので、その時は代替物として、赤ちゃんにどうしてお母さんのお乳を直接あげられないでミルクを与えるのかを、話し掛けながら慈しんで与えてください。大切なことは、その時に負い目を持たないように、お母さんを周囲が支えてあげることです。
これもヒューマンバイオロジーの上に立つ人の心だと思います。
上田■ありがとうございました。女性としても、大変有意義なお話ばかりで、とても勉強になりました。
(※松永産婦人科の今村婦長が書記のようにじっと対談に耳を傾けられていらっしゃいました。松永産婦人科を訪ねると、はじめに今村さんがテキパキと対応してくれます。いつもご苦労様です。そして、今回お集りいただいた皆様、本当に有意義なひととき、ありがとうございました。編集長)
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